宮沢賢治

『銀河鉄道の夜』のあらすじ、解説、感想などなど。

投稿日:2016年5月19日 更新日:

銀河鉄道の夜

『銀河鉄道の夜』は、宮沢賢治の代表作ですね。1933年に宮沢賢治はなくなるのですが、その死後に草稿の形で出てきたものになります。『雨ニモ負ケズ』に劣らず有名な作品でしょうが、意外とどんな話かご存じない方もいらっしゃるでしょう。というか、一度読んでもどんな話だったと伝えるのが非常に難しい作品ですね。一言でいえば、天国行きの電車に乗った一夜の物語……という感じでしょうか。

『銀河鉄道の夜』のあらすじ

主人公は、ジョバンニとカムパネルラという二人の少年です。ジョバンニはちょっと内気で弱気な子で、カムパネルラはそんなジョバンニをいつも守ってあげる優しい子でした。

その日は、街の銀河のお祭りの日でした。学校から帰ったジョバンニは病気のお母さんに牛乳を届けてあげるため牛乳屋へ行って、そのついでに祭りを見て回ろうと考えていました。

しかし、牧場の牛乳屋に牛乳はなく、もう少したってからきてくださいと言われたジョバンニが街を歩いていると、いたずらっ子の同級生たちがジョバンニをからかいました。その中にはカムパネルラもいて、気まずそうにジョバンニを見つめていました。

ジョバンニは悲しくなって、牧場の裏の黒い丘へと駆け出しました。そして、暗い丘の上、星空を眺めて思いをはせていました。すると、突然そこへ銀河ステーション、銀河ステーションという声がして、光の瞬きに包まれます。気が付くとジョバンニは鉄道に乗り込み車窓から外を眺めていたのです。そして、その列車にはカムパネルラも乗っていました。カムパネルラの様子はどこかおかしく、青ざめて見えました。

それから二人は銀河鉄道に乗り、まさしく宇宙の星々を旅していきます。白鳥の停留所へ、プリシオン海岸へ。”ほんとうの幸せ”について語り合いながら。

途中、切符を車掌に確認されるのですが、カムパネルラは造作もないと切符を差し出した一方、ジョバンニにはもちろん切符などありませんでした。ところが、上着に一枚の紙が入っていてそれを差し出すと、車掌はやけに丁寧にそれを見ました。それは、ほんとうの天上へと向かう切符でした。銀河鉄道なら、どこへだっていける切符なのです。

その鉄道は、天上へ向かう列車なのでした。神に召される人が乗る鉄道なのです。やがてサウザンクロスへたどり着き、人は天上へと降りていきます。しかし、ジョバンニとカムパネルラはそこで降りずに、その先へと向かうのです。そして、石炭袋と呼ばれる空の孔へとたどり着きます。ふたりはどこまでも一緒に行こうと誓い合うのですが、その矢先にカムパネルラは姿を消してしまいます。

気が付くと、ジョバンニは元の丘の上にいました。慌てて飛び起き、母さんのための牛乳を取って帰ろうとしたところ、街で騒ぎが起きていました。カムパネルラが同級生を助けようと、川へと飛び込み、浮かび上がってこないのです。ジョバンニは、きっとカムパネルラはあの銀河の空の向こうに行ってしまったのだと思いました。

銀河鉄道の夜の解説、感想

ひかりの素足』をさらに発展させたような印象を受ける作品ですね。法華経だけでなく、キリスト教の影響も大きく見られ、その死生観、宇宙観はまさしく宮沢賢治が生み出したひとつの銀河のように感じられます。読むと、宇宙をめぐる生命の神秘に触れたような心地がしますよ。宗教っぽいですが、まあ宗教っぽい話ですし。また、幸せやよく生きるということがテーマになっています。

自己犠牲の精神で仲間を救ったカムパネルラは、幸せになれたのでしょうか?天上と、本当の天上とは何が違うのか?ジョバンニはなぜ銀河鉄道に乗れたのか、そしてなぜ降りることができたのか?そして、ほんとうの幸せ、とは何なのか……?実に不思議な物語です。

虚実がない交ぜになったこのきわめて幻想的な物語は、四度も書き直された作品だそうで、今なお未完の部分も残ったまま最終稿となっています。きっと、私たちが読める『銀河鉄道の夜』は、きっと本当に宮沢賢治が描こうとした『銀河鉄道の夜』ではないのでしょう。彼が本当に描きたかった『銀河鉄道の夜』はどのようなものだったのでしょうね……。







-宮沢賢治

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