太宰治

『走れメロス』のあらすじ、感想などなど。

投稿日:2016年8月17日 更新日:

『走れメロス』は太宰治が書いた小説ですね。1940年に成立した作品で、ギリシャ神話やシラーというドイツの詩人が書いた『人質』という作品に影響を受け、書かれたとされています。国語の本によく載っている作品ですね。

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『走れメロス』のあらすじ

主人公は、メロスです。村の羊飼いのお兄さんでして、羊と戯れて遊んで暮らしているような人です。両親はおらず、妻もおりません。いるのは十六の内気な妹だけ。その妹が結婚式を挙げるということになり、花嫁衣装や祝宴のご馳走を買いに、その日は村から十里離れたシラクスという町に来ていました。

町にはセリヌンティウスという石工をしている友がおり、会いに行く途中、町の様子が変であることに気づきます。二年前に来た時にはにぎやかな街だったのですが、どうもひっそりとしている。町民を問いただして聞き出してみますと、悪心を持つ者を残らず王様が処刑にしているということでした。妹婿を、息子を、妹を、妹の子を、皇后を、家臣を死刑にしています。何と今日一日で六人が殺されたそうで、少しでも派手な暮らしをして目立つものは人質を差し出さねばならぬ状況なのでありました。

それで皆静かに暮らしているわけです。それで、

メロスは激怒した。

のですね。この書き出しは有名ですね。『人間失格』もそうでしたが、太宰は書き出しが上手い。

ともあれ、メロスは邪知暴虐の王を倒すため、買い物袋をぶら下げ、短剣を持ってのっそのっそとお城へ堂々と入っていきます。で、あっさり捕まります。暴君ディオニスはこれで何をする気だったのだとメロスに問いかけます。メロスは、悪を討つのだと答えます。王はお前にはわしの孤独がわからんのだ、わしは人を信じられんのだと言いました。そして、わしも平和を願っているというのです。

何を言うか、人を殺して何が平和かとメロスが反論しますと、王様はこう言いました。

「黙れ、下賤の者! 貴様も今はそういう口を利いていても、腹の底では何を考えているかわからん。今更、磔の刑にされて泣き言を言うなよ」

そのようにメロスを脅すわけです。泣き言など言うものか、堂々と磔にされてみせよう、ただ……。三日待ってほしいとメロスは言うのです。妹の結婚式だけは上げさせてやり、三日後殺されに帰ってきましょうと。

暴君は鼻で笑いましたが、メロスは本気です。信じられないというならば、この町にいるわが友セリヌンティウスを置いていきましょう。三日後の夕暮れに私が戻って来ないならば、彼を殺しなさいというのです。(セリヌンティウスは超いい迷惑ですね)

王様はこれは世の中の正直者とかいう鼻持ちならん奴らに見せつける良いチャンスだと、メロスを一旦逃がすことにしました。しかも、遅れて来て、セリヌンティウスが殺されたなら、メロス、お前の罪は無罪にしてやろうとカマを掛けるのです。

セリヌンティウスはメロスから事情を聞いて、しかと二人抱き合いました。そしてセリヌンティウスは身代わりとして城に残り、メロスは満点の星空の初夏に町を出発したのです。

メロスは十里の道を一睡もせず急ぎに急いで、翌日の午前に村へと戻りました。そして、妹に急な話だがお前の結婚式は明日挙げようと言ってばったり眠ってしまいます。

夜に目覚めたメロスは今度は婿のところへ行き、夜明けまで議論を続けて翌日結婚式を挙げる承諾を得ました。

翌日の昼、結婚式は無事挙げられました。その翌夕暮れにはもうシラクスに戻らねばなりません。が、結婚式終わりから猛烈な雨が降り始めます。メロスはその晩まで祝杯を挙げ、妹の結婚式を祝いました。そして、ひと眠りする前に妹に「何があってもこれからは夫がいるから安心せよ、お前の兄が嫌いなものは、人を疑うこととうそをつくことだ。覚えていてくれ」と言い残します。

翌朝目覚めたメロスは再び殺されるためにシラクスへ出発します。全行程の半ばへたどり着いたところで、メロスは困りました。川が昨日の大雨で増水し、とても渡れそうになかったのです。

神に祈ったりもしましたが、仕方ない、南無三と川へ飛び込む泳ぐことにしました。万力でどうにか川岸の樹木へしがみつき、泳ぎ切ったものの疲れはマックスに。そこへさらに山賊が現れるのです。

金も何もない山賊、何を取る気かと思うとどうも王の命でメロスを始末しに来た者たちのようです。メロスは三人の山賊をえいやえいやと殴り倒し、さらに死刑への帰路を走ります。

しかし、疲労はすごいし、山賊には襲われるし、午後の太陽は猛烈な暑さでメロスに襲い掛かります。メロスはついに膝からがっくり倒れ込んでしまいます。ああ、ここで終わったら、セリヌンティウスは私の身代わりに死んでしまう。しかし友を裏切ったのではない、私は全力を尽くした。しかし私は裏切り者になるのかしら、ああ、と思っているうちにやがて眠ってしまうのです。

目覚めたときは夕暮れ。岩の裂け目から湧く水を飲み、再び力がみなぎっていることをメロスは知るのです。

そしてメロスは再び猛烈に走り出すのです。陽が沈む間際、ついに町へとたどり着きます。そこにはセリヌンティウスの弟子が下りました。もう走っても無駄です、もう殺されるところです。あなたは遅かった。

それでもメロスはあきらめません。矢のように走り抜き、ついにメロスはセリヌンティウスの死の間際に再び城へと舞い戻ることができたのです。

メロスは一発俺を殴れとセリヌンティウスに言います。俺は一回あきらめかけたのだと。

セリヌンティウスも一発俺を殴れとメロスに言います。俺は一回君を信じることができなくなったのだと。

それから二人は殴り合った後、ひしと抱き合います。その姿を見て王様も真の友情を感じ、心を入れ替えるのでした。

『走れメロス』の感想

人を信じる心にフォーカスを当てた作品で、もう少年ジャンプも驚きのストレートな友情物語ですが、大人になって読んでみると、この文章のスピード感、メロスの思考の矢継ぎ早さがなかなか心地よく、太宰治という人の文章力にちょっと驚きますね。

あきらめないことの尊さ、人間としての誇り、そういうものを思い起こさせてくれます。

最近よく言われるのが、メロスそんなに頑張って走ってなかった説というもので、十里(大体40km)を八時間で戻るってことは、時速5kmだよね、それって早歩きじゃね? 走ってなくね? というものですね。

反論するわけでもないのですが、『走れメロス』はシラーの『人質』という誌をもとにしている作品で、これを読むのはちょっと現在難しいようなのですが、まあともかくギリシャ神話から着想を得た作品なので、時代設定としては古代ローマとかですね。イタリアのシチリア島の東にあるシラクサという町が、シラクスの市のようです。

まあ、裸足で舗装されてない山道を走るとなると、全力でもそんなもんなんじゃないかな……と思います。また、シラクスから戻ってくるとき花嫁衣装とご馳走担いでますからね。たぶんメロス貧乏ですから普段からろくなものを食ってないでしょうし。初日の疲労と結婚式の疲労から考えるとそんなもんじゃないかなと。

とは言え、そういう研究は面白いですね。







-太宰治

執筆者:


  1. […] まあ、もうとにかく俺の話を聞いてくれというこの語り部のスピード感は、同じく太宰治の代表作『走れメロス』を思わせる疾走感があります。そうです、男は突如として現れ、話を始めるのです。 […]

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