イワン・ツルゲーネフ

イワン・ツルゲーネフの『初恋』のあらすじ、感想などなど。

投稿日:2016年2月18日 更新日:

『初恋』は、ツルゲーネフの自伝的小説です。作中に登場する次の一文は、ツルゲーネフの父自身が遺した言葉でもあります。

女の愛を恐れよ。かのを、かの毒を恐れよ。

ツルゲーネフ自身はかなりたくさんの恋をした人物なのですが(農奴の娘との間に子どもがいるはず)、生涯独身を貫き通しています。

いくら恋をしようとも、かの幸を、かの毒を恐れたのでしょうかね。とても辛く悲しく、恐るべき『初恋』が描かれております。

『初恋』のあらすじ

40代のウラジーミル・ペトローヴィチという男が、自身の初恋を二週間でノートに2週間で書き上げたもの、という体の作品。彼の初恋は、16歳の時。

初恋の相手は、隣に越してきた貧しき貴族の娘、ジナイーダ・アレクサンドロウナ。

幾人ものを男を手玉に取りながら、あれやこれやの乱痴気騒ぎをする小悪魔ちゃんな彼女に、16歳の主人公ウラジーミル・ペトローヴィチは、メロメロになってしまう。マレーフスキイ伯爵、お医者のルーシンさん、詩人のマイダーノフさん、退職大尉のニルマーツキイさん、それから軽騎兵のベロヴゾーロフさん、年代、職業様々な男が皆メロメロである。彼女は崇拝されるべき対象であり、その場を、ウラジーミル・ペトローヴィチを、完全に支配している。

しかし、そんなジナイーダ・アレクサンドロウナが、初恋に落ちていることに、主人公は気付いてしまう。一体、彼女の初恋の相手は誰なのか……。

……というようなお話。

到底まともではない初恋

『初恋』の冒頭は場の退屈しのぎに初恋の話をしよう、と言って始まるのだが、同席していたセルゲイ・ニコラーエヴィチはこう言う。

わたしの話は、ほんの二言ふたことで済んでしまいますよ。

たいていの人の初恋はそのようなものではないか。しかし、ウラジーミル・ペトローヴィチが16歳の時にした恋は、こんなものではない。初恋の相手が恋した相手、初恋の相手が、恋した相手に鞭で打たれる姿……。

自分を犠牲にすることを、快く感じる人もあるものだ。

『初恋』には、人間を狂わせる恋というものの恐ろしさ、儚さが凝縮して描かれている。青春の夢と希望、そして幻。しかしながら、いくら何ものも手に入れられなかったとしても、これほど美しく世界が見える瞬間は、この時期しかない。潰えてしまった初恋、青春の先にあるウラジーミル・ペトローヴィチ自身のこの先の人生の虚しさ……。

まあ、四十越えて、夜中の零時半におそらく宿の主人とどこかのおじさんと初恋の話でもしないか、というのはあまり充実した人生ではないような気はする。ウラジーミル・ペトローヴィチは、その後抜け殻になってしまったのかもしれない。

しかし、一緒にメロメロになっていた初恋ではない叔父さんたちが、わりと平然と彼女の初恋の行く末に心乱されることなく過ごしていた。もしかすると、『ほんの二言ふたこと』の初恋、青春を過ごした人は、こうなってしまうのかもしれない。







-イワン・ツルゲーネフ

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