梶井基次郎について

梶井基次郎、おすすめ作品ランキング

投稿日:2020年1月3日 更新日:

梶井基次郎という人は 1901年、明治34年生まれで、亡くなったのは1932年、昭和7年。わずか31歳で亡くなった、いわゆる夭折の天才作家です。 若いころから肺病にかかって、常に病が付きまとうような状況の中で小説を書いてきました。

梶井基次郎の代表作

梶井基次郎と言えば、『檸檬』とか『城のある町にて』でおなじみの作家で、みずみずしい感性で独特の世界観をつくり上げてきた人ですね。

梶井基次郎の魅力

梶井基次郎作品の魅力は、夭折の天才であったがゆえに彼の精神が死と非常に近いところに常にあり、その脆く繊細な感性で見つめた風景を通じて紡ぎ出される文章は実に美しく、また常人にはなかなか感じることのできない領域に達しているところでしょうか。

生前あまり評価されなかった

ちなみに、この大正期及び昭和初期は純文学界隈はとんでもない大豊作時期で、白樺派の武者小路実篤、有島武郎、志賀直哉、里見弴がおり、一方で新思潮派芥川龍之介、久米正雄、菊池寛らがおり、自然派には島崎藤村、正宗白鳥、さらに耽美派として永井荷風、谷崎潤一郎……。さらにさらに川端康成、泉鏡花なんかも同時代にいたのですね。めちゃくちゃ上が詰まっているような状態だったため、なかなか梶井基次郎という人は評価されつつも当時ものすごい流行作家だったわけでもなく、どんどん後から評価が上がっていって、ついには今我々も梶井基次郎は『檸檬』を書いた人だよね、くらいの知識をみんな持ってるわけですね。

人生は常に療養中で、とかく散歩をする人で、散歩をしながらこう考えた、みたいな小説が結構多くて、その中で詩人的発見というか発明のようなアイデアを湧きあがらせ、下記まとめる、といった作品が多かったです。志賀直哉の『城の崎にて』みたいな感じでしょうか。

しかし、志賀直哉ほど思索的というか哲学的というかという感じではなく、完全なる発見、発明がまずあって、という感じがします。生き物が死んでいるのを見ているうちにこういう気持ちになった、というよりは、「檸檬はあまりに美しい爆弾だ」みたいなそういうコンセプトがあります。そのため、私小説的でありながら、詩のような味わい、非常に土着的でありながらどこか空想めいた世界観を生み出しています。

梶井基次郎その人が31歳でなくなっていますので、全作品でそもそも大体数十の短編小説しか遺していないのですが、まあおそらく大体全部読み尽くしたのでおすすめ作品ランキングをつくってみました。母数も少ないため、梶井基次郎作品オススメ5選ということでまとめてみました。

5位『愛撫』

1930年、昭和5年5月に書き上げ、「詩と詩論」誌上にて発表。梶井基次郎29歳の時の作品。タイトルと裏腹に、猫の話。猫のこの世ならぬ可愛さのありかを何だか一生懸命探そうとしている感じが良い。

4位『冬の蠅』

1928年、昭和3年3月に書き上げ、「創作月刊」誌上にて発表。梶井基次郎27歳の時の作品。「創作月刊」は文芸春秋社が新人発掘のために出していた雑誌であり、梶井基次郎をぜひと川端康成らの推薦があって、この雑誌に掲載されることになった。病に伏せる自分の周りを、今にも死に絶えそうな冬の蠅がいて、数日家をはなれたらその蠅が全部死んでしまっていて、自分も何かを生かしていたのか。そして、自分ももしかしたら今何かに生かされているか。実際、この作品を書く前に梶井基次郎は病状が思わしくなく、伊豆に療養に出ている。

3位『桜の樹の下には

1927年、昭和2年10月に書き上げ、「詩と詩論」誌上にて発表。梶井基次郎26歳の時の作品。桜が幻惑的に美しい理由は、樹の下に死体が埋まっていて、その死体から流れる水晶のような液を吸い上げているからだという詩人的発想をそのまま小説なのか詩なのかエッセイなのか、とにかく原稿用紙数枚に書き上げた作品。桜の樹の下には死体が埋まりがちだが、その元ネタはこの作品。美しい世界観ながらどこか病的とも思える発想は、梶井基次郎ならでは。これぞ梶井基次郎。

2位『Kの昇天

1926年、大正15年9月に書き上げ、「青空」誌上にて発表。梶井基次郎25歳の時の作品。自殺してしまった月夜の浜辺で出会ったKという青年がなぜ自殺したのかを滔々と述べる小説。月の光線に照らされた影は、影ではなく生き物の相を帯び、やがてそれが自分の姿になる。その自分に導かれて、K君は月世界へ行ったのだという。不安定な精神にだけ垣間見える、生と死の狭間、ドッペルゲンガーの危うくもあまりに美しい光景は梶井基次郎を味わうに最高の一作。この時期、梶井基次郎の肺病の病状はかなり進行していた。

1位『檸檬

1924年、大正13年10月に書き上げ、「青空」誌上にて発表。梶井基次郎23歳の時の作品。ちなみにこの『檸檬』が掲載された時の同人誌「青空」は創刊号で、あまりに金がなさ過ぎて伝手をたどって岐阜刑務所の作業部が印刷したもの。梶井基次郎の最も著名な代表作であるが、梶井基次郎としてはかなり初期の作品。寺町通の八百屋で売られている檸檬を買い、京都の書店丸善で画集を積み上げてその上に置いてみると、自己の中の鬱屈とした不吉な心持が拭い去ってくれるような気になる、という不思議なお話。青春の憂鬱さを抱えているからこそ見えてくる色彩豊かな美しき世界が何とも魅惑的。これぞ文学、これぞ私小説な一作。

他の文豪のおすすめ作品ランキング

他の作家のおすすめランキングもちまちまとつくっていますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。







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