村上春樹

加納マルタの帽子、シャーベット・トーンとアレス・ギンズバーグと十字軍

投稿日:2016年2月28日 更新日:

加納マルタの帽子、シャーベット・トーンとアレス・ギンズバーグと十字軍

岡田亨

この章で、主人公の名前が与えられる。岡田亨(オカダ・トオル)だ。加納クレタからの電話のやりとりで明らかになる。ちなみに身長172センチ、体重63キロ、髪は短めで、裸眼。カラマーゾフの兄弟の名前を全て覚えている。

電話が掛かってくる前の間に、とても大事なことを考えていたが、加納クレタからの電話で忘れてしまう。それは何だったのか……。

加納マルタから水色のネクタイを着用するように言われたが、水色のネクタイはどこかに行ってしまった……。

そして現れる加納マルタ

岡田亨に電話を掛けてきた謎の女。クミコが兄の綿谷昇に相談したところ、彼女に話が回ったらしい。猫を探してくれる。赤いビニール帽をかぶっている。

水色のネクタイを着用するよう指示を出したのだが、それを着けていなかった岡田亨をすぐに見つけ出すことができた。何も理解できない状況に置かれた岡田亨に対し、加納クレタは彼のすべてを理解しているようだ。

加納マルタに連絡を取ることはできないが、彼女は一方的に岡田亨に連絡を取ることができる。一方通行な理解の危うさの象徴か……。

マルタは偽名。3年間マルタ島にすんでいた。マルタ島の水がマズイという記述が出てくるか、実際のマルタ島の水は海水をベースにしているようだ。

マルタ島の聖なる湧水を飲みに来たとされるアレン・ギンズバーグはアメリカの詩人。キース・リチャードはローリングストーンズのギタリスト、かな?(ストーンズのキースだとすると、キース・リチャーズ表記の方が一般的)

マルタ島

マルタ島にあるヴァレッタの鐘。

加納マルタが語る、体の組成と精神の話

加納マルタは、体の組成に関する仕事をしている。村上春樹は文壇にいることを拒否し、普通の作家がしないようなことをしようと言っており、その中の一つに体を鍛えるということがある。肉体の組成というのは、村上春樹のひとつのテーマかと思う。

汚された、マルタの妹”加納クレタ”

加納マルタの五歳年下の妹。加納マルタの助手のような仕事をしている。岡田亨の妻”岡田久美子”の兄である綿谷昇に強姦されたらしい。犯されたことで、体の組成を汚されたのだという。

ひとつずつ何かを失い続ける岡田亨

どうも加納クレタは、岡田夫妻のいなくなった猫ワタヤ・ノボルを探してくれるらしい。が、岡田夫妻が住んでいる場所は”不思議な場所”で、流れが変わってしまったことがきっかけで猫がいなくなったという。もう近くにはいないらしい。

この時点で、岡田亨は、猫のワタヤ・ノボルを失い、妻にプレゼントされた水玉のネクタイを失い、電話が掛かってくる以前まで考えいた大事なことを失っている。個人は何を持って個人たり得るか、というのを描こうとしているのではないだろうか。







-村上春樹

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著者 村上春樹 第一部泥棒かささぎ編は1992年10月号~1993年8月号まで『新潮』にて掲載。 第二部予言する鳥編は1994年に発行。 第三部鳥刺し男編は1995年に発行。 村上春樹は『風の歌を聴け …