芥川龍之介について

『河童』のあらすじ、感想、解説など。

投稿日:2018年8月7日 更新日:

『河童』の作者は芥川龍之介です。芥川の後期の作品で、『歯車』や『或る阿呆の一生』などと並び、晩年の代表作の一つとして名高い作品です。神経衰弱に陥っていた芥川龍之介の心理状態が色濃く反映されており、芥川龍之介の命日、まあ自殺した日ですね、それは7月24日なんですが、その日は「河童忌」と呼ばれています。

どうか Kappa と発音して下さい。

という何やら不吉な冒頭文というか副題から始まる本作は、十七の章に分かれた、中編小説です。ユーモラスな一面もありつつ、どこか重く暗く、奇怪な世界へとあなたを誘います。

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芥川龍之介『河童』のあらすじ

これは、とある精神病棟に入院する患者、第二十三号がする話で、それを出来るだけ忠実に書き残したものである。

三年前、穂高山の梓川の辺りを霧が濃い中散策していた時、河童が現れた。逃げ出した河童を追いかけ、その背に手が届かんとしたところで深い落とし穴のようなところに落ちてしまった。そこは、河童の世界だった。

チャックという河童の医者に助けられた僕は、1週間後、特別保護住人となり、河童の国に暮らすことになりました。最初に出会った漁師の河童、バッグと仲良くなり、次第にこの河童の国のことを理解して行きます。

まず、だいたい人間世界にあるものは河童の世界にも存在する。ピアノもある、エッチングもある。しかし、人間より小柄なので、全体的に何もかもが小さい。

河童は緑色でなく、周囲の色に合わせて色を変えるカメレオン的特質があること。また、高度な文明があるが、腰まわりを一切隠そうとはしないこと。

それを何故なのかバッグに問うてみると、人間が隠す方がおかしいという。そう、常識に関しては人間と河童ではひどくちぐはぐです。お産の際には、出て来る河童に本当にこの世界に生まれ落ちたいかを問い、その返事があったものだけ生まれるのです。

なんてことを学生の河童、ラップに聞いているうちに、とある河童に万年筆を盗まれてしまいました。河童の世界にも盗っ人はいるのですね。

他には詩人のトックという河童もおりました。彼は生活のために生きる河童を軽蔑し、芸術のために生きる者を至上主義としていました。曰く、超人主義であると。また、そうした河童が集まる超人倶楽部なるものもあるのでした。

河童の生態に関する話が続きます。河童は恋愛すると、とにかく雌が雄を追っかける。音楽祭もあったりして、音楽は風紀を乱すとして警察の弾圧があったり、資本家の河童(ゲエルという名)がいたり、機械工業が発達していたり、立派な資本主義社会が存在しています。違っているのは、クビになった労働河童は、クビでなく食用にされるのだそうです。また、河童の敵はカワウソだったりします。

そんな中、話は少しずつ趣きを変え始めます。芸術論を語る河童たち。そして、『阿呆の言葉』という書物を著した哲学者マッグ。神経が衰弱していく超人主義の河童たち……。

ある時、万年筆を盗んだ河童を見つけ、それを巡査に伝えるのですが、子どものために盗んだが、子どもはすでになくなっているので無罪、というとんでもない判断が下されます。河童の社会の裁きと人間社会の裁きとの差について話が繰り広げられますが、河童はどうも、罪名を言い伝えるだけで死んでしまうのだそうです。河童の神経は恐ろしく細やかで、時に言葉だけで殺してしまうこともできるのです。

その時、一発の銃声が鳴り響きました。それは、詩人トックが自らの頭に放った銃声でした。彼は、死後、自身の死後の名声を知らんがため、幽霊となって現れ、死後の世界で数々の自殺した偉人たちと交友を深めていました……。

そうしているうちに、主人公自身も憂鬱になってきて、人間の世界に戻ることにしました。町はずれに住んでいる、時間が経つにつれて若返る河童の元を訪ね、彼の家の天窓から人間の世界に戻ったのでした。

それから彼はとある事業に失敗し、今度は河童の世界に戻りたくなったのですが、そこで巡査につかまり、ついには精神病院に入れられたのでした。彼曰く、たびたび病院には河童が見舞いに来てくれるのだそうです。しかし、河童がくれた見舞いの花です、と何もない空間を指さし、トックの全集を読み聞かせましょう、と電話帳を繰りながら、誌を読み上げます……。

彼は、担当医であるS博士の許しが出るならば、発狂してしまった裁判官河童のペップのもとへと見舞いに行ってやりたい……というところで本作は幕を閉じます。

芥川龍之介『河童』の解説、感想、考察

奇書、と言っても過言ではないほど、かなりおかしな小説です。自らとは異なる異質な存在として描かれる河童が、どんどん人間の側に近づいて来るというか、向こう岸にいた河童という存在がどんどん同化していって、人間の国に戻ってもまだそこには河童がいて、ついに自分自身が河童になってしまったかのようなところまで行ってしまう。

異質であった存在が、自分自身になってしまう。自分自身が異質であることに気付いている。どことなく芥川龍之介の顔も河童に似ていませんか?河童の国の中に芥川龍之介の思想のすべてがどんどん投影されていく様が、実に何か恐ろしいですね。

実際、上高地には河童橋という橋があるそうです。『河童』が書かれる前からあったようですが、本作によっていっそう有名になったそうです。

『或阿呆の一生』、『歯車』……辺りを一気に読むと、恐ろしく憂鬱になりますので、あまりお勧めしませんが、芥川龍之介という人の苦悩を知るにはうってつけではありましょう。







-芥川龍之介について

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