宮沢賢治

『注文の多い料理店』のあらすじ、感想、解説などなど。

投稿日:2018年8月5日 更新日:

『注文の多い料理店』は、天才宮沢賢治が1924年(大正13年)に著した児童文学小説です。生前の宮沢賢治が唯一出版した児童文学短編集のタイトル作品でもあり、この短編小説はほぼ自費出版という形でわずか1000部が出版されました。発売元は盛岡市の杜陵出版部と東京光原社を発売元だそうです。同人誌くらいの規模ですね。

なお、生前に出版された本はもう一つありまして、詩集『春と修羅』です。この二冊だけが宮沢賢治が生前に遺した書物となります。どちらも販売は振るわず、特にこの『注文の多い料理店』は「イーハトヴ童話」のひとつだったのですが、1000部が売り切れることもなかったそうで、ついに続編が出版されることはありませんでした。

ちなみに、この『注文の多い料理店』の短編集に収録されたのは、

  • どんぐりと山猫
  • 『狼森と笊森、盗森』
  • 『注文の多い料理店』
  • 『烏の北斗七星』
  • 『水仙月の四日』
  • 『山男の四月』
  • 『かしわばやしの夜』
  • 『月夜のでんしんばしら』
  • 『鹿踊りのはじまり』

と9作あり、『注文の多い料理店』は3作目に位置しています。タイトル作だけあって、圧倒的に『注文の多い料理店』が有名ですね。

教科書に取り上げられたり、読書感想文の課題になったり、1958年には人形劇になったり、1993年には短編アニメーションになったり、2017年にはダンス音楽劇になったりと、様々なところで本作に触れてきた方が多いと思います。

大人になって読み返すと、なかなか虚を突かれるというか、自分もまたこんな間抜けの一人ではなかろうかと思ったりしてしまいますよ。ということで、ラストシーンのネタバレまで含み、5分くらいで読めるあらすじをまとめてみました。

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『注文の多い料理店』の短く簡単なあらすじ

主人公は二人の若い紳士。兵隊のような格好をしていて、鉄砲を担いで、それぞれ山犬を一匹ずつ連れています。二人は山で猟をしておりまして、さっぱりその日は猟がうまくいかないのでした。

そこはひどい山奥で、一緒に来ていた鉄砲撃ちもはぐれてどっかへ行ってしまいました。それから、山犬もドタっと泡を吹いて倒れました。犬が死んで損害が出たとブツクサ言いつつ、なにやら不吉なものを感じ取った二人は宿へと踵を返すのですが、これがどうにも道がわからない。やがて腹ペコになったことに気づきます。

その時、ふと後ろを見ると、山猫軒という一軒の西洋料理店があったのです。扉を開けたそこは、たいそう立派な料理店で二人も満足していました。玄関には誰もいませんでしたが、どなた様もお入りください、太った人や若い方は大歓迎、なんて書かれていたのです。そりゃあ、僕らのことじゃないかなんて二人は喜び勇んで入るのですが、どうもおかしくなってくる。

注文が多くてすみませんが、という前置き書きがあって、それから、扉を開ける度に確かに注文が多い。髪をとけ、金属性のもの、尖ったものを外せ、クリームを塗れだの、色々ある。これはよほど貴族が来るからか、とか、料理に電気でも使うのか、赤切れするからかと自分たちを納得させて進むが、どうもおかしい。そして香水を振りかけて、最後に裸になった自分の体に塩を塗り込む。

これはどうもおかしい。書き置きには、もうすぐ料理ができるという。これはどうも、まるで、自分たちが料理されているかのような……引き換えそうとしますが、後ろの扉は頑として開かない。進む方の扉には、その巨大なかぎ穴から奥が見えて、目玉とナイフとフォークがギラギラときらめいているのでした。

奥の方から化け猫たちの声が聞こえます。二人は顔をくしゃくしゃにして泣きだしました。

その時、死んだはずの、2人が連れていた山犬が部屋へと飛び込みました。そして、化け猫たちと大立ち回りを演じ、やがて山猫亭は姿を消し、いつの間にか2人はただ森の中にいて、そこいら中の枝えだに服やら鉄砲やらがかかっていました。

やがてはぐれていた道案内の専門の鉄砲撃ちが走り寄って来て、二人は無事山を出て東京に帰れたのでした。しかし、化け猫に会った時に泣いたくしゃくしゃの顔は、いつまでも直らなかったのでした。

『注文の多い料理店』の感想、解説

森に迷い込み、そして腹ペコで、一軒のレストランが目の前に現れて、数々の奇怪な注文を受けた時、おかしいなと思う自分を押しこらえて(最初は押しこらえる様子もなかったですが)、自分の都合の良いように解釈していく様は、滑稽でありつつもなかなか恐ろしいものがあります。

案外おかしいなと気づかずにそのまま自分の中で良いように都合よく受け止めて、深みにはまっていく、というのは、日常生活でも案外あることかもしれませんね。もし自分がそうなったとしても、これはおかしいと思って抜け出せるかどうか? もしかしたら、私たちもまた威張り散らしたイギリス兵隊みたいな恰好をした都会人の一人なのかもしれません。

ともかく、犬が死んだときに、「こりゃ四百円の損だね」と言ったりするような、心貧しき者たちに対する鉄槌のような物語です。最後にその死んだはずの、冷たくあしらったはずの犬たちに助けられる辺りが、皮肉が利いていますね。

自然に畏怖せぬ者、敬意を払わぬ者たちに警鐘を鳴らすかのような物語で、くしゃくしゃの顔がついに戻らなかったのは、それが理由でしょうか。ぜひあなたもご一読いただければと思います。







-宮沢賢治

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  1. […] 『どんぐりと山猫』は宮沢賢治が生前唯一出版した作品集『注文の多い料理店』に収録されている短編小説です。まあ、小説というか童話と言った方が良いかもしれませんね。 […]

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