宮沢賢治

『よだかの星』のあらすじ、感想、解釈とかとか。

投稿日:2016年2月13日 更新日:

『よだかの星』は、宮沢賢治が著した小説というか童話というか、作品です。宮沢賢治は数多くの作品を遺しましたが、私にとってはナンバーワンに近い作品です。夜鷹という存在が、懸命に生き、そして死に行かんと命を燃え尽くさんとするその様は、あまりに美しく、儚く、気高い。カッコつけるようですが、このように生きて死にたいと、割とふと思います。

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『よだかの星』のあらすじ

よだかはみにくい鳥です。他の鳥から、疎まれ、嫌われています。ちなみに正確には鳥綱ヨタカ目ヨタカ科ヨタカ属のヨタカという鳥で、鷹の仲間ではありません。それゆえ、鷹から特に嫌われています。だから、鷹は、名前を改めよとよだかに言います。市蔵という名にせよと。それを書いた札を首からぶら下げて、一軒ずつ伝えて回れ。ひとつでも伝えていない家があれば掴み殺してやると鷹はよだかに言い渡します。

よだかは、辛い辛いと思いながら、空を切り裂き、飛びまわります。その際、甲虫や羽虫がよだかの喉へと入りました。よだかは、その時、鷹に命を奪われようとする自分もまた、たくさんの命を奪っていることに気付き、辛くてたまらなくなってしまうのですね。そこで、よだかは遠い遠い空の向こうへと行ってしまおうと決意するのです。

よだかは、兄弟の川せみに別れを告げ、遠くの空へと向かいました。まずはお日さまのところへ。しかし、よだかは、夜の鳥。お星さまに頼みなさいとお日さまに言われてしまいます。

夜になり、西のオリオン座へ。南のおおいぬ座へ。北の大熊星へ。東の鷲の星へよだかは行きます。

しかし、どの星にも断わられてしまいます。もうよだかには力は残っていませんでしたが、最後の力をふり絞り、真上の空へと飛んでいくのです。しかし、星は少しも近づきません。やがて、自分が上を向いているのか、下を向いているのかさえわからなくなってしまいます。

目を開くと、よだかはカシオペア座のとなりで自分の体が青白く光っていることに気付きました。よだかは星となっていたのです。よだかの星は、今も輝き続けています。

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『よだかの星』の感想

『よだかの星』におけるよだかが空を飛ぶさまは勇ましく、力強く、そして悲しいものですね。自分の身すら捨て去らんばかりに飛ぶ姿は、100年の時を越えても読む者の心を強く揺さぶります。

宮沢賢治は自然への畏怖、宗教的なものを感じさせます。『よだかの星』もそうで、他の鳥から嫌われるよだかが、追い詰められ最後に天へと舞いあがり、命を賭して星になります。文章の勢いと星になるという神話性から『よだかの星』はとても感動的ではありますが、よくよく考えてみるとこの結末はちょっと不思議だとは思いませんか?

『よだかの星』の解釈。よだかはなぜ星になったのか

よだかはそもそも星になりたかったわけではないんですよね。”遠い遠い空の向こう”へ行ってしまおうと考えたのですね。

星のあるところまでへ連れていってほしいと願うよだかに、どいつもこいつもひどい言葉が浴びせ掛けます。

おまえなんか一体どんなものだい。たかが鳥じゃないか。おまえのはねでここまで来るには、億年兆年億兆年だ。

『よだかの星』

余計なことを考えるものではない。少し頭をひやして来なさい。

『よだかの星』

星になるには、それ相応の身分でなくちゃいかん。又よほど金もいるのだ。

『よだかの星』

よだかが空の向こうまでたどり着くことは、あんまりにも遠すぎて、あまりに馬鹿げており、”余計なこと”であり、身分も金も足りないと言われています。社会の中で受け入れられなかったよだかが、また別の世界に行こうとすることさえ拒否されているのです。彼の住む場所は、どこにもないのですね。

なみだぐんだ目をあげてもう一ぺんそらを見ました。そうです。これがよだかの最後でした。もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした。ただこころもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらって居りました。

『よだかの星』

自分の全力を出しつくし、よだかは最後に笑顔を残しました。いかなる悲運の中にあろうと、よだかは生の限りは尽くしたのです。そうしてから、よだかは星となるのです。

それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。そして自分のからだがいま燐の火のような青い美しい光になって、しずかに燃えているのを見ました。すぐとなりは、カシオピア座でした。天の川の青じろいひかりが、すぐうしろになっていました。そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。今でもまだ燃えています。

『よだかの星』

持たざるものであるよだかは、死して星となったのです。なぜよだかは最後に星になれたのでしょう?この問いは、すなわち、宮沢賢治は、なぜよだかを星にしたのか?とも言いかえられるでしょう。よだかは焼けて死んでもかまわないはずと言ったのですが、彼は、宮沢賢治の手によって、死して燃え続ける星となったのです。

カシオペア座は、季節に関わらず北の夜空に輝き続ける星座です。つまり、その隣で輝くよだかの星は、いついかなる時も北の夜空には輝いているのです。疎まれ、嫌われ、孤独な存在が、夜に星となり、空から光を落とし、今もなお燃えているのです。

もしかすると、宮沢賢治は孤独の極星を夜空に光らせることで、生き辛さを抱える人々を支える物語を生み出そうとしたのではないでしょうか? 私はそんなことを思いました。

さあ、よだかはどうして最後に星になったのでしょうか。そんなことを思いながら、ぜひどうぞ『よだかの星』をご一読ください。







-宮沢賢治

執筆者:


  1. […] このかっこうに、宮沢賢治の別作品である『よだかの星』のよだかのような、命そのものをささげてしまうかのようなひたむきさだけが、人のこころを打つのではないかと思いました。 […]

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